1日目・見上げてごらん夜の星を

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 ききーっ、外で音がした。自動車が止まる。エンジン音が大きい、普通の乗用車ではなさそう。  恰幅の良い男が入って来た。制服から自衛隊とわかる。 「陸上自衛隊、旭川方面本部所属、黒岩二等陸佐であります!」  大きな声で自己紹介と敬礼をしてきた。久麗爺も脇の締まらない敬礼を返した。 「おっとと、自衛隊さん、今は遠慮して下さい。警察が事情聴取を行おうと言う時でして」 「すでに警察が対応できる問題ではない、国家の存亡がかかっている。我々にまかせて、警察は外で検問だけしていたまえ」  なにおっ、と双方譲らず、火花を飛ばすにらみ合いとなった。  わいわい、外で声がした。また誰か来たらしい。 「わたしは国会議員、衆議院議員の今津、今津弘だ。今津、今津、今津弘である!」  選挙の街宣車よろしく、名前を連呼して腹の出た男が入って来た。どどど、さらに何かの音がした。 「旭川市市長の大山です、旭川の問題はまかせなさい。旭川の市民は旭川の市長と共にあります」  また煩いのが入って来た。警察と自衛隊は政治に直接関与しないのが原則、広川と黒岩は口を閉じて見守る。  がやがや、また声がした。市議会の議員に町内会の会長が来た。道議会の議員秘書が議員の代理で来た。  久麗爺は頭を抱えて玄関に背を向けた。太郎も同じアクションで背を向ける。 「なんか、つまらん事態になって来た」 「宇宙人から見て、これは面白い事かなあ?」  太郎のつぶやきに、玄関の騒動がピタリと止んだ。
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