1日目・見上げてごらん夜の星を

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 久麗爺の私室は科学屋の端の四畳半、壁の二面を天井まで本棚が占める。あふれた本が床に山積みだ。  そこへ大の大人が7人、誰も譲らずに入り込んだ。まるで、60年前のトキワ荘であった新漫画党の集まりのよう。  とりあえず、真ん中に座るのは久麗爺。国会議員と市長が大きな顔で対面に座り、市議と道議の秘書は脇にいる。刑事と自衛隊は入り口付近で立ちだ。町内の会長は居間に下がった。 「みなさん、お茶を」  美智が茶と茶菓子を持って来た。手渡しで部屋の中へ入れる。美智は部屋に入らず、すぐ居間へもどった。  旭川名菓のクッキーが配られ、久麗爺が茶を煎れて7つの湯飲みを満たす。 「おもしろい星ならば、それなりの関係を。つまらない星ならば・・・消去!」  久麗爺が問題の核心を言った。 「観光客なら、いつでもウエルカムです。しかし、我が国の伝統と法律を守ってもらわねば」  大山市長は街の繁栄を第一に考える。外国からの観光客は大いに誘致の対象だが、宇宙人は想定外である。 「日本国憲法の第9条により、日本は戦争を放棄している。相手が宇宙人であれ、戦争はできない。だが、向こうが日本の法律を尊重してくれるとは限らない。現に、領空侵犯はし放題だ」 「やつらは侵略戦争を仕掛けようとしている。つまり、やつらの法律を押し付けて来るのだ」  今津は国会議員だけあって、国際問題として宇宙人の来訪を考える。侵略も国際問題の一つだ。 「地球や日本の法律を主張しても意味が無い、向こうが面白いと感じないかぎり・・・」 「つまらないと感じたら、北朝鮮と同じように踏み潰される・・・」 「やつらは、地球人の内紛を誘おうとしている。朝鮮半島を踏みつぶす時には、久麗さんを利用した。朝鮮人の事だ、地球の運命などほったらかしにして、千年恨むとか、また変な言いがかりをして来そうだ」  ぎくり、久麗爺は指摘されて胸が痛んだ。巨大ロボットを操縦する喜びに夢中で、足元の人々に注意を払わなかった。
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