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2日目.世界の中心で戦いを叫ぶ
東の空が明るくなってきた。大雪山がシルエットで空に浮かぶ。明けの明星、金星が山を見下ろすロマンチックな時刻。
久麗爺は目覚めた。疲れていたが、早起きは習慣だ。
タブレットを脇に抱え、裏玄関から庭に出た。表の方は警官やら自衛官やらで物々しいが、こちらは静かだ。
裏庭の鳥エサ台にタブレットを置いて立てた。ちょうど、画面が目の高さになる。
ビデオのアイコンをタッチして、再生ボタンをポチッと押した。じゃんじゃかじゃーん、ラジオ体操第一の前奏が始まった。
「お早う」
突然、イム・ベーダーが横に立っていた。2メートル超えの大男ゆえか、土の地面に揺れを感じた。転送して来たのだろう。昨日と同じく、メカメカしい腕輪と首輪をしている。ムキムキな筋肉も昨日と同じだ。理事としての正装かもしれない。
「お早う」
言葉だけ返し、久麗爺はタブレットを見る。画面の女は背伸びの運動、久麗爺も合わせて背伸びの運動をした。
「こういうのが好きなのか?」
「これも、男のロマンだ」
久麗爺は画面の女に合わせ、手を左右に振る。イム・ベーダーも一緒に体操を始めた。
ゆったりTシャツ、下を縛って、おへそ出し。ピチピチのホットパンツ、タブレットビデオの女の扮装である。同じ体操でも、他のコスチュームのビデオがタブレットの中に入っていた。フロントハイレッグカットにティーバック、上下ピチピチパンパンなレオタード体操。紐ビキニの水着、白シャツと紺ブルマな学校体操着、ミニスカートとブレザーのオフィスレディ・・・もちろん、全裸(モザイク有り)もある。
ゆったりTシャツの中で乳が揺れる・・・これが男の煩悩を刺激するのだ。もろ見えでは、想像力も妄想力も働かない。七十才過ぎな久麗爺が求めるのは脳への刺激だ。
深呼吸して、朝の体操は終わり。すっかり明るくなり、大雪山はシルエットの時を過ぎて、雪を頂きにした姿を現している。
体を東に向け、日の出を浴びる。グッドデイの始まり。
久麗爺は横目でちらり、イム・ベーダーを見下ろすドローンも確認した。もう生放送中であろうか、聞いても意味は無いと諦めた。
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