2日目.世界の中心で戦いを叫ぶ

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「お爺ちゃん、お早うございます。朝ご飯にします?」  嫁の声だ。しかし、ずいぶん改まった言い方。そっと久麗爺は振り返り、ぎくり、固まった。  早朝と言うのに、美智は化粧をして髪を整え、めったにしないピアスまで付けている。完全装備な出で立ち。もちろん、テレビ対策であった。 「そっ・・・そうだね」  やっと声をしぼり出して答えた。 「そちら様は?」 「いただこう」  イム・ベーダーは頭の角をなで、美智の誘いに応じた。  今日の朝ご飯は黒米入り、黒米の量が少なめなので赤飯のような色合い。納豆は国産、十勝の大豆。大豆の大半が輸入の時代にあっては、国産大豆は貴重品で高級品である。  味噌汁の出汁は利尻昆布、具のワカメは体内の塩分を調節する機能食品。卵焼きで動物性タンパク質を、大豆で植物性タンパク質を摂る。朝から完全栄養を目差した食事となった。  食後にはカテキンたっぷり緑茶。イム・ベーダーは日本の風習に従い、ずずー、すする音をたてて飲む。  テレビは朝の天気予報、アナのしゃべりはいらないので消音にしてある。 「どうした、何か悩みでも?」  久麗爺が問いかけた。 「昨日から、我々に向けた地球側の発信が多くて・・・多いだけでなく、つまらないのばかりで。無視を続けるべきか、一発やって黙らせるか、判断を迷ってる」 「つまらないのが多い・・・」 「代表的なのを見るかね」  イム・ベーダーは腕輪を操作した。ぴっ、反応があって、テレビの画面が変わった。  これは、あなたの家のテレビ受像器の故障ではない・・・黒い画面に、昨日と同じテロップが流れた。  テーブルを片付けていた美智、はたと手を止めてた。髪を整え背筋を伸ばして、また片付けを再開した。
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