2日目.世界の中心で戦いを叫ぶ

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 居間のテレビが宇宙船と接続した。データのアーカイブのようで、地球人の顔が並んでいる。イム・ベーダーは腕輪を操作し、その中から一列を選択、再生が始まった。テレビの音は通常にもどっていた。 「侵略者よ、オレ様が相手だ。貴様の首をオレのヘッドロックでへし折ってやるぜ!」 「しゅっしゅっ、オレのハンマーパンチで宇宙人は3ラウンド以内にノックアウトだ!」  ・・・以下、同様な挑戦者の雄叫びが続いた。さすがに、地球人でも嫌気がさしてくる。 「昔々、チャーチルとヒットラーがボクシングで戦って、戦争の決着としよう・・・なんて冗談があったな。あれから、地球人の思考は進歩してないようだ」  久麗爺は第二次世界大戦の前半に流れたブラックジョークを思い出した。あれから80年以上過ぎている。 「プロレスラーやボクサーは、曲がりなりにも戦いを職業にしてる。しかし、スポーツとしての戦いだから、ルールの縛りは厳格だ。ルールが外れたら、見て楽しい戦いにはならない」 「やりようによっては、見て楽しい戦いもある?」  久麗爺のつぶやきに、イム・ベーダーがのって来た。 「異種格闘技の戦いは、ルールのすり合わせが大事なのさ。アントニオ猪木対モハメッド・アリのプロレス対ボクシングは失敗例だ」 「ルールか・・・」  イム・ベーダーは腕輪を操作し、猪木対アリのビデオを検索、再生した。スライディングしてアリの膝下へ回し蹴りを入れる猪木、ダウンした相手に攻撃しては反則のボクシング。ちっともプロレス対ボクシングになってない、奇妙な戦いである。 「地球と君らとの戦いも同じだ。持てる力が違い過ぎて、まるで噛み合わない。他者からは、一方的な虐殺としか見えないだろう」 「確かに問題の核心だ。どうすれば面白くなるか・・・何か、知恵があるかね?」 image=510501172.jpg
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