2日目.世界の中心で戦いを叫ぶ

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 久麗爺は首を傾げた。遙かに強力な力を持つ宇宙人から、戦いの方法についての知恵を求められた。  昨日、巨大ロボットが朝鮮半島を縦断して踏み潰した時、それを操縦していたのは久麗爺だった。今度は何をさせようとしているのか、それが気になる。 「囲碁か将棋で決着を付けて・・・いや、わしは苦手だけど。血を流さない戦いの方法としては、究極かもしれない」 「ふむ、血の流れない戦いなら、見て楽しい場合もあるか」 「ローマ時代、剣闘士の戦いでは、血が流れないと、面白くないと観客がブーイングしたらしい。40年ほど前か、テレビのプロレス中継で、流血戦が流行った事があった。血を流すレスラーが持て囃された、ラッシャー木村とかアブドラ・ブッチャーとか」 「血を見て興奮するのも、人間の業かね」  イム・ベーダーは興行師のような役割のようだ。地球侵略のイベントを通じて、何か面白い事を探っている。  しかし、久麗爺は頭を抱える。何を提案しても、宇宙人が面白いと思うか分からない。 「戦争のロマンなど、所詮は、生き残った者だけが言える思い出話だ。あるいは、戦争をボードゲームのようにする将軍たちの茶飲み話しか。戦争の現場で、槍刀を交わし鉄砲を撃ち合う兵士は、泥を食み返り血を浴びながら、どんなロマンを語れるものか」 「戦場でロマンを語るか・・・」  イム・ベーダーは腕輪を操作した。また、宇宙人に挑戦しようとするレスラーやボクサーの画になった。 「こいつらとは、どう戦ってもロマンは無い。やはり消去しよう」 「あっ、いや、それは」 「データを消去するだけだ」  一瞬あわてたが、久麗爺は胸をなで下ろした。消されるのは録画データだけらしい。
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