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2日目.世界で一番熱い
「あ?」
イム・ベーダーが小首を傾げ、頭の角を指でかいた。かきかき、角がかゆくなったのか。
「また、別の主張をする者がいるようだ。はて、やや意味不明な言葉が混じっているが」
久麗爺も小首を傾げ、薄い髪の頭をかいた。宇宙人から意味不明と言われるとは、どんな連中か、ちょっと興味がわいた。
首輪を操作すると、テレビの画面が変わった。モップのような黒髭をたらし、右手を振り上げて叫ぶ男が映った。
「アッラーの頭上を汚す輩が迫っている。起て、イスラムの民よ。今こそ、ジハードの時である」
イスラム教の指導者が演説していた。だっらっ、アラビア語の発音は聞いていて熱く感じる。砂漠で生まれた言語だけに、砂漠の熱さに負けないように発達したのか。
久麗爺は腕を組んで考える。イスラム教徒が怒る理由を探れば、タイヤの溝のパターンがコーランの一節に見えたとか、言いがかりに近い事ばかり。イスラム教は神が与えた最高にして最後の教え、と自画自賛する宗教だ。やたら異教徒の行動に干渉したがるのは、キリスト教と良く似ている。最高の科学を自称するマルクス・レーニン主義にも通じる思考だ。
「宇宙船のどれかがアラビアにいて、それでイスラムさんが怒ってるんだろう?」
「6号機が紅海上にいる」
久麗爺が問うと、イム・ベーダーは腕輪を操作した。
テレビに映ったのは衛星高度から6号機を見下ろす画面。アフリカ大陸の北東、エジプトとエチオピアの国境あたりから、紅海へ宇宙船が東へ進んで行く。速度はマッハ1前後だろう。紅海を渡った先はサウジアラビアだ。
「あそこ、もしや・・・メッカじゃないの?」
「うむ。その上空を通過するコースだ」
「イスラムの聖地だ。そりゃあ、怒るかもね。寺の行事を、勝手にドローンで撮ろうとしてトラブルになった事があったな。ワシントン上空やモスクワ上空とか、お国の法律で飛行制限をしてる空域もある」
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