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「そんなものかなあ」
イム・ベーダーは眉も動かさない。何か反応するなら、受けて立つ気構えのようだ。昨日もそうだった。
と、地上から小さな光が飛んだ、ミサイルか。さらに、もう1機が飛び出した。2機のミサイルが宇宙船に向かって行く。
うむ、イム・ベーダーが口を締めて見守る。
最初の光は宇宙船の先端あたりへ飛んで、消えた。次の光は到達する前に、途中で消えた。
「普通の対空ミサイルだった・・・のかな。標的が大き過ぎて、爆発も見えない。もう一つは、燃料切れかな。高度30キロと言えば、普通の対空ミサイルには到達高度の上限だ。ちょっと角度がずれても、行き着けなくなる」
「なるほど、あれでも高過ぎるのか」
「北朝鮮は弾道ミサイルを使った。だから、とどいたんだ。的が大きいから、照準は要らなかった。あの高度の物に確実に当たるミサイルは、弾道ミサイル迎撃用とか、地球では特殊な部類になるよ」
久麗爺の解説に、イム・ベーダーが肯いた。
「では、ミサイルがとどく高度まで降りてやろう」
イム・ベーダーは腕輪を操作する。6号機に指令を送っていた。
テレビの宇宙船は陸地に達する直前だ。と、海面の影が近付いて来た。いや、宇宙船が高度を下げている、イム・ベーダーの言葉の通りに。
「よし、高度は1000メートル、携帯ミサイルでも当たるぞ」
イム・ベーダーが自慢げに言った。宇宙船の下の海面に白い霧がわき上がって広がっている。
久麗爺は時計を見た。宇宙船が高度を下げるのに30秒しか経っていない。3万メートルから1000メートルへ30秒、実質、1秒で1000メートル下がった。速度はマッハ3ほどだ。
宇宙船の下面には大きな衝撃波面ができたはず。マッハ3ともなれば、空気分子の摩擦でセッシ200度以上の熱波になる。海面が沸騰するはずだ。あれは霧ではなく、海面が沸騰した湯気だ。
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