2日目.世界で一番熱い

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 また、F-15が衝撃波面にぶつかった。さらに、F-16もぶつかって空中分解した。  緊急脱出したパイロットは衝撃波面にぶつかり、射出シートと一緒に熱の壁に押されて落ちて行く。パラシュートが開きかけたが、衝撃波の乱流にもまれ、絡まってしぼんだ。しぼんだパラシュートを引きずり、衝撃波面にはじかれながら落ちて行く。 「決して敵わぬと知りながら、己の死が次ぎに挑む者たちへの教訓となると信じて、彼らは散っていく。これこそ、男の生き様・・・いや、熱き男の死に様だ。ああ、良いものを見せてもらった」  握りしめた拳を振るわせ、イム・ベーダーは感動の涙を流した。  と、今度はため息をついた。 「彼らの覚悟に比べ・・・こちらの対応は、なんと芸の無いことか。昨日のほうが、まだ、うううっ」  肩を落とし、イム・ベーダーは首の通信機を操作した。  テレビの宇宙船が上昇し始めた。上昇速度は毎秒1000メートルほどか、長さ30キロの巨体なので緩やかに見えた。  地表付近は急に負圧となった。周囲から超音速で空気が流れ込む。宇宙船の下面に向かい、竜巻が発生した。地表の物が吸い上げられる。新たな暴風が吹き荒れて、高さ数千メートルの砂嵐はピナツボかキラウエア火山の噴火を思わせた。  じゃね、とイム・ベーダーは居間から転送で姿を消した。ツーンと耳鳴りがきた。あの巨体の体積の分、部屋の気圧が下がったのか。  むむむ、久麗爺は口を閉じて考える。  テレビに映し出されたのは、広島や長崎の原爆と同等か、それ以上の惨劇だ。しかし、それを科学的に解析しようとする自分がいる。人間として、これは正しい事なのか。  3秒考えて、大人の男としては・・・やはり、感情に流されるのは良くない、と結論した。情が優先する国もあるらしいが、科学的な対処無くして、宇宙人の侵略には抗えない。
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