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2日目.北京のゴーゴー日より
地上から約3万6千キロ、静止衛星の高度にアスタータ惑星侵略委員会の0号機はいた。全長は500キロ余り、地上から双眼鏡で見える大きさであった。地上を調査中のと同型の11号機と12号機が、300キロの距離で同伴し、護衛の任に着いていた。
7号機が帰還して、ドッキングした。となりのドッキングベイには23号機がいた。昨日、核攻撃を受けたので、精密診断を受けている。
全長30キロの機体も、ここでは艦載機の一つに過ぎない。次の発進に備え、補給と整備が始まった。
委員会理事序列2位、イム・ベーダーがタラップから降り立った。
「イム・ベーダー、入室」
会議室に入ると、事務方が正名を告げた。
長いすなどで待機していた他の理事が立ち上がる。
「すまん、ちょっと・・・急に、腹の具合が」
理事の序列5位、コシ・ヌーケーが待ったをかけ、会議室を辞した。惑星侵略委員会の会議は立って議論する。体調などで立てない時は、議事には加われない決まりだ。
理事の1人が抜けた。また、1人は出張中である。定員7名だが、会議は5人で始まった。
「いつまで調査しても、意味は無い。退屈なだけだ」
「地球側の反応は出尽くしたようだ。これ以上の調査は、暇つぶしにもならない」
理事たちから辛辣な意見が出た。
イム・ベーダーは角をなで、言葉を探した。調査が退屈なのは、こちらの調査法にも責任がある、と感じていた。学者であれば、調査が退屈なのは当然と受け止めるだろう。が、理事の中に学者出身の者は少数派である。
「消去するか、撤退するか、決めて良い時期と考えるが」
「何もせずに撤退しては、アスタータ惑星侵略委員会の名に泥を塗る事になる」
理事たちの目がイム・ベーダーに集まった。
「わたしとしては、万に一つでも良い、地球側にも勝利の可能性を与えるべき、と考えます」
おおう・・・イムベーダーの言葉に、他の理事たちがどよめいた。
「どうしたら、万に一つも、我々が地球に敗れると言うのだ?」
「あり得ない!」
これまで発言しなかった理事筆頭が口を開いた。
「確かに・・・負けるかもしれぬ、と思えば・・・これは、退屈している暇が無い」
イム・ベーダーは感謝して頭を垂れた。
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