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ずしっ、床が揺れて、久麗爺は目を開けた。
四畳半の中央、大男が立っている。メカメカしい首輪と腕輪、頭のてっぺんに大きな角のイム・ベーダーがいた。部屋に転送で来たのだろう。
「お休み中、失礼する」
相変わらず礼儀正しい侵略者だ。他人の家をのぞき見するだけのマスコミと大違いである。
久麗爺は起きて、あぐら座りになった。年のせいか、寝た状態から急に立ち上がるのが苦手になった。
「惑星侵略委員会は侵略方針を確定した。いよいよ、本格的にやるぞ」
「いよいよ・・・かい」
具台的に何をどうするか、全長30キロの宇宙船を駆って空を支配する連中の胸の内は計り知れない。
「いや、その前に・・・」
イム・ベーダーが耳を押さえた。何か通信が入ったようだ。
「また、つまらない事を仕掛けようとする者がいる。さて、少しは考えた行動であろうかな?」
「つまらない・・・」
久麗爺はイム・ベーダーの言葉を復唱していた。つまらない事が多ければ、地球は消去されてしまう。
「さて、生放送スタートだ」
イム・ベーダーはテレビのスイッチを入れる。四畳半のテレビは20インチ、今時にしては小型な方。実は卓上パソコンの別機能だ。大小、二人の男が並んで小さな画面を見る。
これは、あなたの家のテレビ受像器の故障ではない。こちらで放送電波を制御している・・・例の字幕が黒画面に流れた。
ぱっ、画面に素人っぽいオヤジが二人映った。久麗爺とイム・ベーダーだ。いつの間にか、あのドローンも室内にいた。一緒に転送して来ていたのか。
ぴぴっ、またイム・ベーダーに通信が入った。
「やれやれ、18号機が攻撃を受けてしまった。映像は1分前から流す」
テレビの画面は地球を衛星高度から撮る図になった。
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