1人が本棚に入れています
本棚に追加
どこか、茶色い砂漠地帯の上空を行く宇宙船。地上との間に雲が無く、30キロの高度を感じられない画だ。地上には、かすかに何本か細く白い線が見える、道路であろうか。
東側から小さな光が上昇した。宇宙船の高度を超え、さらに高く行く。光が消えた。
と、宇宙船の上面で大きな光が起きた。全長30キロの宇宙船と比較すれば、光の直径は1キロほどか。しかし、数秒で消えた。
地上から宇宙船を見上げる画面に切り替わる。黒い影の向こう側で、何かが光る。しかし、地上は平穏そのもの。
「今回は核ミサイルか。いや、爆発の規模からすれば、水素爆弾だろうな。1メガトンくらいはあったかなあ。あそこでは地上より気圧が低いから、プラズマ火球の大きさより密度が問題だな」
久麗爺が光を分析する。大き過ぎる敵に対して、地球側の兵器は小さ過ぎる。
「いや、しかし・・・ひとつの方法ではあるな。大威力の水爆を使うなら、あれの上側で爆発させれば、地上への影響を最小限にできる。いやいや、あれを本気で撃ち落とす気なら、上も下も関係無くなるか」
「芸の無い反応だ。イスラムのような気概が無い。つまらん連中は消去する」
イム・ベーダーが静かに言った。まだ本格侵略の前だ、地球全体が消去される場面ではない。
「許可する」
通信機を操作し、イム・ベーダーは言った。
宇宙船は移動速度を上げた。砂漠地帯から、草原と思われる地帯へ入った。
数機の飛行機が接近する、偵察機だろう。がんばって高度を上げても、1万メートルと少し。宇宙船には近づけない。
ドローンが近寄って飛行機を撮れば、赤い星のマークがあった。中国の飛行機だ。ロシアのTu-16爆撃機をコピーした偵察機、さっきの攻撃の威力を偵察している。
「中国が持つ水爆なら、最大の物は3メガトンから4メガトン。だが、はたして、自国の都市近くで使う度胸があるか・・・文化大革命や天安門事件を考えれば、国民の犠牲より共産党の威厳の方が優先するかな」
次の攻撃を予測すると、久麗爺は頬がひくと動いた。
最初のコメントを投稿しよう!