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テレビを見ながら、イム・ベーダーの口元がほころんだ。昨日は無かった地上の混乱が面白いようだ。
また、操縦席へ誘われるかも、と久麗爺は身構える。今回は断るつもりだが、誘惑に勝てるか、その時にならなければ分からない。
「爺ちゃん」
太郎が顔を見せた。ちょいイム・ベーダーに睨みをきかせ、久麗爺の横に座った。長男として祖父を心配しているのだ。
「また、向こうが動くぞ。同時映像に切り替える」
イム・ベーダーが宣言して、テレビの画面が少し変わったように感じた。
土煙は薄くなって、市街地の混乱が良く見える。市民の車はロボットから遠くへと動き、戦車が道を塞ぐように列を作っている。まるで、怪獣を迎え撃つ自衛隊のような図だ。
「来た」
イム・ベーダーがつぶやくように言った。
小さな光が巨大ロボットの背後に近付いた。ぽっ、大きな光になってロボットの頭部を覆った、核爆発だ。
どどどん、衝撃波が北京市内を揺るがす。
「また、背中への攻撃か。街への被害を最小化する作戦、当然と言えば当然だな」
久麗爺が中国軍を評した。
「戦争・・・だよね、これ」
ごくりとのどを鳴らし、太郎がうめく。
隕石の衝撃波ではない、原爆の衝撃波で起きた土煙が街を包んでいる。が、赤茶けた土煙が晴れると、ロボットは悠然と立っている。
渋滞の列では、人々が車から降り始めた。車を捨て、走って逃げる。
「また、来るぞ」
イム・ベーダーが言うのと同時に、小さな光が巨大ロボット目がけて飛んで行く。しかし、今度は北京の方から飛んで行く。
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