1日目.星から来たあいつ

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 屋根の高さに何かがあった。1メートルほどの大きさ、鳥ではない、機械のよう。  少し考え、久麗爺は機械に向き、左手を腰に、右手でVサインをした。顔にはスマイル、定番のポーズ。 「爺ちゃん、何してんの?」 「たぶん、あれは宇宙人のドローン、地上の物を調べているんだ。当然、カメラ付きのはず。写真かビデオに撮られているなら、やっぱり」 「で、Vサインするの!」  太郎は祖父の行動に呆れた様子。しかし、久麗爺は大まじめである。  ドローンが高度を下げ、2メートルほどの高さに降りて来た。均一と太郎をクローズアップで撮る様子だ。  均一は肘鉄を太郎にした。何かしろ、との指示だ。太郎は頷き、ぎこちない笑いで右手を上げた。アメリカインディアンなど、世界的にありふれた挨拶の仕草である。  同時刻、久麗家の台所では、嫁の美智がご飯を炊いていた。宇宙船接近の非常事態に備え、まずは食料の準備。とても女らしい発想。  居間では、長女の美優がニュースで接近中の宇宙船を見ていた。女の子ゆえ、高校生になっても、宇宙船を窓から直接見るのは怖いよう。次女の美佳は小学生、姉の不安を我が身の不安として感じ取り、ひたすら姉の腕にすがりついている。  と、テレビの画面がブラックアウトした。時計やファックス電話機は動いている。電気が落ちたのではない、他の家電は正常だ。 『これは、あなたの家のテレビ受像器が故障したのではない。我々が放送電波を制御しているのだ』  不思議なテロップが黒い画面に現れた。 「我々・・・?」  美優は字幕を復唱した。我々が何を指すのか、意味が理解し難かった。  首をひねっていると、画面がもどった。でも、映っているのは素人っぽい二人、普通の放送ではない。 「あ・・・太郎? と・・・お爺ちゃん?」  正しく、それは久麗均一と太郎。美優の祖父と弟だった。ぎこちない笑いと仕草でカメラに向かっている。背景を見れば、場所は自宅の裏、科学屋の前のようだ。
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