3日目.人民の、人民による、人民のための何か

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 久麗爺を乗せた車の行列は球場の駐車場に入った。  車を降りて、球場のスタンドを見上げた。わーわーっ、何やらにぎやかである。  出迎えた大山市長は落ち着かないそぶり。わーっ、球場内から声が起きるが、耳を逸らしたがる様子。 「こんだけ警戒してるから、観客はゼロかと思ったのだが」 「今日は、市民に対して開放してる訳ではない。彼らは検問がきかない、勝手に入ってしまった」 「市民じゃないとすると、誰なの?」  市長は口をつぐんだ。言いたくないらしい。  国道沿いに建つスタルヒン像に片手で挨拶、投球フォームをまねてみた。ちょっと腰にきて、本来の目的を思い出す。  スタンドへの入り口に向かって歩いて、息を飲んだ。鬼が入り口を塞いで立っていた。  身の丈は3メートルほどもある、むき出しの山のような筋肉が鎧のよう、猛牛のような頭の角が猛々しい。あああっ、右の鬼は口を開き、牙をさらして、今にも噛み付きそうな形相。んんんっ、左の鬼は閉じた口もとに牙がのぞき、太い金棒を軽々と担いでいた。 「武器の持ち込みは認めない」  鬼が角を振って言った。久麗爺の後ろに続く警官と自衛官に忠告だ。  広川と黒岩は拳銃を懐から出し、部下にあずけた。警官隊と自衛隊は外に待機、広川と黒岩だけが代表として同行する事になった。  鬼は左右に分かれ、通路を開けた。  すでに、スタルヒン球場は宇宙人の手に落ちていた。この先は地球の法律も常識も通じない場所、と覚悟が必要だ。
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