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久麗爺も南の空を見た。先日、旭川の上空に来たのと形の違う宇宙船が見えた。少し青白く霞んでいるが、まだ距離があるせいだ。
手の指で上下左右の角度を測る。高度が30キロより上なら、この前のより確かに大きい。
宇宙船の下面に垂れ下がっている物がある、ロッドか釣り糸のように見える。が、細く見えるのは宇宙船の大きさゆえと知った。
どどどんどん、衝撃波が体を揺さぶる。スタルヒン球場が・・・いや、旭川が宇宙船の日陰に入った。近付くにつれ、垂れ下がっていた物が、実は幅数十メートルもある建造物なのがわかった。
陰が濃くなり、夕暮れのようになってきた。天空の大部分を宇宙船が覆ってしまったせいだ。
球場の照明灯が点いた。グランドが明るく照らされる。
雲を割って、天空から垂れた塔の先端が近付いた。風が強くなった。
塔の先端がスコアボードの上をかすめ、ついにグランドへ降りて来た。
パパパッパパーッ、ラッパのような音が響いた。
7人目の天使がラッパを吹くと、獣が地に放たれて・・・久麗爺は何かの本で読んだ一節を思い出した、何の本だったかは思い出せない。
塔の先端が開いて、階段のような物が出て来た。人が乗っている。
階段の下端がダイヤモンドの2塁ベース付近に接した。動く階段に乗り、人が降りて来た。
「諸君、我がアスタータ惑星侵略委員会筆頭理事、キミノヒ・トミ様である」
「とみ? おトミさんね」
イム・ベーダーが降りて来た者を紹介した。筆頭と2位では、立場は天と地ほどの差、まるで執事のような言葉遣いと態度である。
久麗爺は目をこらした。侵略者の筆頭の姿を目に納める。
どう見ても女である、ナイスバディーでセクシーダイナマイツ。イム・ベーダーと同様なメカメカしい腕輪と首輪を着ていながら、長い髪を風に巻いて、ビッグなバスト、締まった腰、グレートなヒップにワンダホーな太股だ。無論、頭のてっぺんには角があった。1本だけでなく、何本も列を成してるように見えた。
忘れかけていた男の煩悩が、腹の底でグツグツと沸き立とうとしていた。
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