3日目.人民の、人民による、人民のための何か

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「なにゆえか、わたしが出張る事になろうとは」  キミノヒ・トミがつぶやくように言った。 「戦いを本分とせぬ者が惑星の運命を決する戦いの最前線に立つ、これが面白いかと」  イム・ベーダーの答えにキミノヒ・トミは眉をうごかし、ゆるりとピッチャーズマウンドへ歩を進める。  まさか、と久麗爺は半歩下がる。 「さて、諸君、地球側代表は久麗均一氏、侵略委員会側の代表がキミノヒ・トミ様。本来、二人は戦士ではないが、今日の戦いの主役である」  イム・ベーダーの紹介に、くけけけっ、ぐわぐわっ、観客席が人外の声で沸いた。  本気かよ・・・久麗爺は疑いの目を向ける。 「どのように戦うか、その方法を説明しよう。この星で、その中の小さな国で昔からある競技、相撲でいこう」 「相撲を、男と女が?」  つい声を出し、久麗爺はキミノヒ・トミを見た。女なのは外見だけ、中身は別物かもしれない、宇宙人であるし。あの柔らかく見えるビッグなバストとグレートなヒップは本物ではなく、外骨格スーツのデザインかもしれない。 「現代の相撲のルールでは面白くない。この競技が始まった原初のルールに立ち戻ろう」 「昔のルールでね」  久麗爺は相撲の歴史を脳内で再現する。  日本における相撲の期限としては、垂仁天皇7年(紀元前23年)旧暦7月7日 、野見宿禰と当麻蹴速の戦いがある。柔道や空手など、すべての格闘技の起源とされる。当時の戦いは、蹴る殴るが主体。最後は、倒れた相手の足を蹴り折って殺してしまった。現代ならデスマッチと呼ばれる決着の付け方。 「しかし、それでは地球側に不利である。なので、ハンディキャップを与えよう。久麗氏がキミノヒ・トミ様の頭の角飾りを取ったら地球側の勝ち、とする」 「角飾りを?」
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