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「やあ、こんにちは」
大男が現れた。小首を傾げて会釈してきた。ちょっと無愛想だが、敵対的な態度ではない。
「はい、こんにちは」
久麗爺はオウム返しで応えた。2メートルを超える身長の男は、肩と腕の筋肉が全盛期のアーノルド・シュワルツネガーかハルク・ホーガン以上。口元に牙がのぞき、頭のてっぺんには大きな角が1本ある。ちょっとメカメカしい腕輪と首輪をしていた。鬼か悪魔か、相撲取りにしては髪型と扮装が違うし、迷い込んだプロレスラーだろうか。
「宇宙人だよ!」
太郎がささやいた。
空震が止んで、静かになっていた。宇宙船が頭上で停止している。
「わしは久麗均一と申す。この家の前の主、今は隠居だ。久麗の爺と言う事で、久麗爺(くれいじい)などと呼ばれておる」
久麗爺は勤めて冷静に言った。こくり、宇宙人は頷いた。
「わたしはイム・ベーダーと言う。アスタータ惑星侵略委員会の序列2位にいる理事だ」
宇宙人にしては流暢な日本語であった。つん、と自慢するように右手で頭の角をなでた。
久麗爺は宇宙人の容姿を見直した。筋肉ムキムキと見えるのは本物の筋肉ではなく、外骨格スーツのデザインかもしれない。
「アスタータ惑星侵略委員会は、当該惑星に対しヘリオセ・スベータ型侵略を行う事になった。現在は本格侵略前の調査中である」
「侵略さんの2位の理事さんですか。お偉い方のようですな。あいにく、わたしは学級委員や町内会でも長の付く立場は苦手なもので、地球の代表のような事は、ちょっと」
「わたしは何かを交渉するために来たのではない。それに、もう生放送をしている」
イム・ベーダーはドローンを指した。
「放送?」
言われて、久麗爺はドローンを見た。つい、またVサインを出していた。
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