1人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女は数メートル離れた所に着地。ふう、大きく息をついた。
地球人より大きく跳ぶ力を持っているが、それなりに体力を使う能力のようだ。追い込むうちに、やがて跳べなくなる。その時に捕まえられるだろう。
正統な柔道のように手をつかむのは諦め、足に狙いを変えた。三船久蔵十段がやった双手刈りで、まんぐり返しに倒してやる、と心の中で誓った。
がるるる、久麗爺は歯を剥きだして、闘志を露わにする。見る人が見れば、発情した痴漢親爺そのものかもしれない。
また前傾姿勢をとり、痴漢親爺は・・・・もとい、久麗爺はダッシュした。
キミノヒ・トミが跳んだ。
その足を狙い、久麗爺は手をのばす。あと数ミリで細い足首と脹ら脛をつかむ・・・と、その時!
バチッ、火花が飛んだ。
どさっ、グランドに体が叩き付けられた。息ができない、目の前が暗くなっていく。
「この程度かえ、つまらんのう」
キミノヒ・トミの言葉が聞こえた。しかし、久麗爺は反応できない。
つまらん・・・その言葉の意味は重い。人間が、地球が消去の危機にあるのだ。だのに、体が動かず、地面に大の字だ。何もできない自分を恥じ入る事さえできない。
回る・・・体が回る感覚。平衡感覚が崩れている。突然、地面が割れて、無限の闇に落ちて行くような気がした。
最初のコメントを投稿しよう!