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その時、イム・ベーダーは観客席にいた。久麗家の席の並び、太郎のとなりに座っていた。大柄なイム・ベーダーと比べては、太郎の体格は半分ほどに見える。
「爺ちゃん、何がどうなって?」
「ふむ、キミノヒ・トミ様の電気ショックがあったようだ」
「電気ウナギみたいに?」
「地球の単位で測れば、最大で1万ボルトほどになる場合もある」
「1万ボルト!」
「しかし、電流にすれば0.1アンペアも無いはず。我々と地球人では、体の作りに大きな差がある訳ではない。健康ならば、ちっと痛い・・・いや、かなり痛い場合もあるだろう」
悠然としてイム・ベーダーは事態を解説した。ひく、ほおが動いた。
「爺ちゃんは健康だとしても、年寄りだよ」
「老齢なのは、少し問題かもしれない」
太郎に突っ込まれ、イム・ベーダーはグランドに注目した。久麗爺は倒れて動かない、立ち上がる気配が無い。
びくり、イム・ベーダーは手首の装置をいじりる。とたん、太郎のとなりは空席になった。
グランドの真ん中、久麗爺は大の字に倒れて動かない。
「来たか。なんとかせい、つまらんではないか」
キミノヒ・トミは現れたイム・ベーダーに言った。
確かに、戦いは始まったばかり。早々に終わったとあっては、セッティングしたイム・ベーダーの責任問題になりかねない。
と、背後にマントを羽織った者が、もちろん頭に角を生やした宇宙人である。
「おおっ、メッド・イシンか、来てくれたな」
「この現場をモニターしておりましたので。確かに、これで終わっては、侵略に来たかいも無い」
顔に継ぎ目のある医師であった。彼ら宇宙人のための医師ゆえ、実は、地球人は専門外である。
「しかし、これは地球人だ。おまえに診られるのか?」
「ご心配はもっとも。しかしながら、若い時分、獣医の助手を務めた事もありますので」
「獣医の助手ね」
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