1人が本棚に入れています
本棚に追加
イム・ベーダーと久麗爺の対話はドローンから宇宙船へ送られ、全地球に生配信されていた。それぞれの国の言語で字幕が入り、同時通訳サービスも手抜きは無い。
アメリカのワシントン、ホワイトハウスは宇宙船対策で不夜城となっていた。無論、テレビ放送も欠かさずチェックしていた。その電波がジャックされ、日本からの中継放送になった。
「ガッデム!」
宇宙人が地球の代表にアメリカを選ばなかった、一部の将官は激怒した。しかし、大統領補佐官は冷静を保った。宇宙人との交渉役に立つ機会は別にあると確信した。
「お爺ちゃん・・・たら」
今のテレビの前で、美優は恥ずかしさに顔を伏せた。美佳は祖父が映るテレビを喜んでいる、小学生らしい反応。
主婦の美智は作りかけたお握りを、手の中で握り潰してしまった。
義父と長男は科学屋の外にいる、美智は気付いて台所を出た。渡り廊下から科学屋に入った。
科学屋は古い石造りの納屋を改装した物。その隅の四畳半が久麗爺の部屋だ。床は古い本だらけ、踏み場もとぼしい義父の部屋に入れば、窓の外に二人の姿があった。背の高い宇宙人もいる。
がんがん、窓ガラスの音。
久麗爺は自室の窓を振り返る。中から、嫁が手招きした。うん、と頷きを返す。
「外で立ち話もなんなので、中で続きをどうかな?」
「お世話になろう」
久麗爺の誘いに、イム・ベーダーは簡単に同意した。妙な仕掛けが無い事など、とっくに調べがついているのだろう。
家の裏側から前の道路へ出た。正面玄関から客人を招く事にした。
大男が背を屈めて玄関をくぐる。角をぶつけないよう、イム・ベーダーは頭上に注意を払っていた。中継のドローンが続いた。
太郎はドローンの後をつけながら、あれこれ探る。
「プロペラによる飛行じゃないんだ。やっぱり重力制御とかいうやつなのかな。でも、重力をなんとかしてるなら、周囲の空間に影響が出て、光が屈折するんじゃないのかな。でも、何も見えないし」
うーむうーむ、未知の機械を目の前にして、少年の好奇心は尽きない。
最初のコメントを投稿しよう!