1日目.星から来たあいつ

7/8
前へ
/63ページ
次へ
 久麗爺と太郎が靴を脱いであがったので、イム・ベーダーも靴を脱いで上がった。この辺、日本の生活習慣の調査も進んでいる様子。さらに何を調べようとしているのか。  美智は居間のテーブル上を急いで片付け、来客用に茶菓子の盆を置く。主婦の習慣的行動だ。  久麗均一と対面でイム・ベーダーがテーブルに着いた。太郎が横に着き、男三人でテーブルを囲む。ドローンが居間の風景を撮れば、テレビに三人が映っている。デジタルテレビなので、0.1秒ほど遅れた画だ。  茶を入れた湯飲みをテーブルに出し、一礼して、美智は台所へ下がる。下がったところで、美智は顔を手でおおった。 「なんて事を! お化粧してない、スッピンでテレビに出ちゃった・・・」  娘の美優と美佳は同じく台所に下がっていた。が、母にかける言葉は無かった。 「落ち着いたところで、もう一度、なんとか侵略の事を聞いて良いかな?」  久麗爺の問いかけに、イム・ベーダーは角をなでて頷く。 「アスタータ惑星侵略委員会は第17854の3号決議を行い、この地球にヘリオセ・スベータ型侵略を行う事になった」 「へりお・・・何とか侵略と言うのは、具体的に何をする侵略なのか。説明してもらうと有り難い」 「ヘリオセ・スベータ型侵略は・・・ここの言葉に訳するなら、暇つぶし・・・又は、退屈しのぎ」 「退屈? そんな、ひどいよ!」  太郎が声を上げた。 「たかが侵略である。他に何か、御大層な理由が欲しいのかな」  イム・ベーダーは頭の角をなで、ギロリと目を向けた。  太郎は口を締めて、ギロリと眼を返した。 「日本は憲法9条があって、戦争を放棄してるんだ。そっちが戦争を仕掛けてきても、受ける事はできないよ」 「それは、そちらの都合で決めれば良い。我々は、ただ侵略するのみである」  太郎は中学生、法律や歴史を学んで言葉にできるようになった年頃だ。  しかし、イム・ベーダーは侵略者である。侵略されてしまえば、現在の憲法や法律は無効になると覚悟しなくてはならない。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加