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1日目.禁じられた遊戯
ピピッ、何かが鳴った。イム・ベーダーは首輪に手を当て、何事かをつぶやいた。通信機だったようだ。
「23号機が攻撃を・・・たぶん、意図的な攻撃を受けた。被害は特に無いが・・・はて、つまらん反応だ」
つまらん・・・イム・ベーダーのつぶやきに、久麗爺は胸をおさえた。地球が消去される危機に瀕している。
イム・ベーダーは腕輪で何かの操作をする。こちらも何かの通信機的な物のようだ。
「これは外から見た23号機。ドローンが撮った、距離は200キロほど」
テレビの画が変わった。
今、旭川の上空にいる宇宙船の同型機を地上付近から撮った画。機体の前半分は海上に出ている。各宇宙船は単独で飛んでいない、地上の情報を収集するドローンを数多く伴っているよう。
地上には見た事の無い街があった。日本国内ではなく、どこか外国のよう。ヨーロッパのような豊かさを感じさせる風景ではない、貧しい国を連想させた。
と、光が地上のどこからか飛び出した。ぐんぐん上がって、宇宙船の下面に迫って行く。
ピカッ、小さな光の玉が起きた。衝撃波らしいのが球状に広がり、消えた。宇宙船は揺れる事も無く、そのまま飛び続けている。
「もしや、核ミサイルかな。標的が大きいから、爆発が小さく見えただけで」
久麗爺は科学屋の主として、兵器の知識も少々ある。脳内の知識を総動員して、この事態を分析した。つまらん反応をした国はどこか、テレビの画から推測する。イランか、パキスタンか、インドか、核ミサイルを保有しつつ、庶民が豊かではない国を探した。
「他の機からの画だ」
衛星軌道から地球を見下ろす画になった。日本列島から中国、フィリピンも映っている。23号機をズームアップで映せば、下の地形に見覚えが、北朝鮮の日本海側の海岸線だ。
ちかっ、宇宙船23号機の端で小さく何か光った。
「宇宙からだと、いよいよ小さいな。北朝鮮の原爆ミサイルなら、せいぜい爆発力は10キロトン程度、火球の直径は200メートルほどか。長さ30キロの物が相手では、あんなものかもしれない」
はあ、久麗爺はため息をもらし、つまらん反応と言ったイム・ベーダーに同意していた。
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