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 もやもやの晴れない朝は、昨日の時任さんを思い浮かべたせいだった。今や慣れ親しんだものばかりが並ぶ部屋で、こんなに浮かない気持ちになるなんて馬鹿げている。休日は決まって少しのんびり起きるのが習慣になっていた。  遅めの朝食に、茹で卵とコスタリカ産のコーヒーを淹れた。インスタントの粉がシュワッと微かな音を零してお湯になじむと、酸味のきいた香りを(くゆ)らせる。壁掛けの油絵に目をやって、その瞼を薄く閉じた。 「今日はお天気ね」  レースのカーテンから差し込む光が油絵に描かれた緑を優しく照らしていた。そうだね、と彼が笑うのがわかる。その気配に心が落ち着くのがわかった。そうだね、洗濯日和だね。  昨日は散々な雨だった。散々な雨で、散々な一日。 「彼との同棲をやめる気はないの?」  時任さんにはなきん(、、、、)だからと彼行きつけの小料理屋に連れていかれて、二杯目の飲み物を選んでいたときだった。 「やめたくても、やめられないんです」  少し黙ってから、それでも正確な言葉を口にしたつもりだった。やめたい、幾度も考えたことはあったけれど、きっぱりと決断はできなかった。 「どうしても?」     
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