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「子供ができたのが分かったんだよ。結婚自体はもう決めてたし、できちゃったからってわけでもないんだけどな」
言い訳みたいに話す姿がいじらしくて、私は思わず噴き出した。
「なんだか変な感じ。二人が結婚かぁ。本当におめでとう」
「サンキューな」
本当に、変な感じだ。結婚、結婚、結婚。いくら胸の内で繰り返してみても、それはまるで絵空事だった。
「そっちは?絵描きが趣味の敏腕部長だっけ。美加子から聞いてたけど、まだ続いてんだろ?」
嬉しそうな表情のまま、巽くんが切り返す。それも予想したものだった。だいたいいい歳した女が何年か彼と続いていれば、誰だって聞いてくるものだ。
「こっちはどうだろうね。そのうち、かな」
「あと半年だっけ?約束の三年」
瞳をキラキラさせたように、美加子が割って入る。
「約束なんて大げさなのよ。目安…というか、まずは三年、自分と戦う期間をもらっただけ」
なんだ、つまんない。そんな顔で二人は引き下がった。
なにも続けられなかった私が彼に見合う女になりたくて、背伸びをしながらも地べたに足を付けてやってきたことだった。
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