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「雄花……あれって……」
さっきまで意気揚々としていた篤弘もさすがにこれは予想していなかったのだろう
2人の間に少しの沈黙が流れる
そして個室の中から、シクシクと女の人の泣く声が聞こえる
嘘だろ……と思った瞬間に掴んでいた俺の手を振りほどき、篤弘は叫びながら走り去ってしまった……
「ちょ…おい!」
俺もすかさず後を追おうとすると個室の中から女の人の声が聞こえた
「男の人……ですか?」
泣きながら話してるかのような、震えた声
何を血迷ったのか、思わず返事を返す
「はい……」
「この際、男の人でも良いです……そこに紙は置いてありますか……?」
紙…?噂通りの台詞だ……もう嫌だ、お家に帰りたいのに足が動かない……
「紙がなくて……あの……拭けないんです……」
ん?拭く?紙ってトイレットペーパー?
周りを見渡すが置いてない。普段使われていないから補充もされてないのだろう、他の個室にも見当たらなかった
「失礼ですが……幽霊などではないんでしょうか……?」
分かってる、自分が訳の分からないことを聞いてるのは分かってる。だが安心したいんだ俺は……
「幽霊……?いるんですか?そこに……?」
いや、あなたに聞いたのですが……
ポケットに中にティッシュがあるのを思い出し、個室の中に投げ入れる
水を流す音が聞こえ、個室の扉が開く
中から制服姿の髪がぐしゃぐしゃな女の子が出て来る
俺はその瞬間、あ、俺死んだわと思った
が、その生徒は手を洗い、ぐしゃぐしゃな髪を直し泣いていた
「助かりまじだあ……もう怖かっだでずう……」
はい?俺の制服を掴み離さない、そしてなぜか大号泣をしている
「あの……ここの学校の生徒さんですか……?」
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