トイレの花子さんの噂

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「はいぃぃ、ぞうでずう……」 俺の制服で顔を拭くな…… 「とりあえず……ここ出ません?」 ぐしゃぐしゃの顔を俺の制服で拭いたお陰なのか、涙は止まっていた ふと腕時計を見ると時刻は20時を回っていた 篤弘はどこまで逃げていったのだろうか。あいつは後で覚えてろよ…… やっと女子トイレから出て、改めて彼女に目をやると綺麗な黒髪のポニーテールで整った顔立ち 綺麗な人だな…… 「本当にありがとうございました……一時はもうダメかと思いました……」 「ちょっとよく理解できないのですが……説明してもらってもいいですか?」 そもそもなぜこんな時間にトイレにいたのか、それが不思議で仕方ない 流石に実体はあるし、お化けとかじゃないだろうし…… 「お名前をお聞きしてもいいですか…?」 名前…か、大丈夫だよな……多分 「白島(しろしま) 雄花です……」 「そうですか……では雄花さんとお呼びしますね」 「はあ……」 今この状況で名前を聞くことが大切なことなのだろうか…… 「雄花さんはこの学校の七不思議って知ってますか?」 七不思議……知っているとも、知らなければこんなところには連れてこられてないだろう 「ああ、知ってるよ。さっきまでもう1人連れがいたんだが、噂のあったここのトイレに来たんだが……」 「なるほど、話が早くて助かります。実は私もその噂を確かめにこのトイレに入ったんです」 「一人で……?」 「はい!一人です」 なんと勇敢な女子生徒だろうか、篤弘も見習って欲しいものだ 「それでなぜ、電気もつけず個室の中へ……?」 その女子生徒は顔を赤らめながら答えた 「このトイレの外でしばらく待っていたのですが……恥ずかしながら、少し用を足したくなりまして………この時間に電気をつけると見回りの人に気づかれてしまうので、こっそりとここのトイレで用を足していると、紙が無いことに気づいたんです……もう真っ暗だし怖くて泣いていたところに、雄花さんが現れた訳です……」
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