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 翌朝、僕は結局空にいた。端末から音楽を流しながら滑空していた。〈神様の胃袋〉以前に愛していたものを忘れてしまうのが恐ろしいという、おそらくはそれだけの理由で。  眼下に広がるのは、相も変らぬカーネーションの海。はじめのうち、僕は確かにそれを美しいと思っていた。いつまでも見ていられると思っていた。ところが僕の前頭葉は、僕自身が思うよりずっと飽きやすかった。  アンは、毎日同じ景色を見て、それで満足だと言っていた。どうして? 僕はもう疲れてしまったのに。ほかのみんなだって、もうそれぞれの幸福にうんざりしているのに。パラグライダーのように、世界中が緩やかに降下しているというのに。  彼女は本当に享受者なのか? 何度も頭をもたげた不安が、ふたたび僕に絡みつく。
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