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Episode22 ~逆戻~
文字の刻まれた銅板のどこが貴重で、それほどの価値があるのか。
金や銀なら分かるが、銅はほとんど価値がない。
だがジャヌが目を光らせて貴重だと言うのであればそうなのだろう。
私よりこの世界に詳しいはずだ。歴史や文化に関しても知識は豊富だろう。
「これが俺の思ってる通りの物なら、焼きごてがある筈だ」
焼きごて……エルオーデとジャンが遊び半分で使っていた【J】の焼きごてと同じものか。
そうだとすれば、どういった関係があるのか。
銅板から私に冷たい視線を移すジャヌ。
「あの屋敷へ戻る気はあるか?」
死体が放置されている所へなど戻る気はない。
犯人が犯罪現場へ戻る心理はよく知られている。それによって捕まる確率が高まる。
そんな愚かな行動は控えるべきだ。
ジャヌであれば、現場へ戻ったとしても何事もなく帰ってこれるはずなのに、なぜそれをしないのか。それに、私たちには屋敷へ戻る理由がない。
焼きごてだろうとなんだろうと、そんなものは関係ない。
捕まるのだけは御免だ。
カトリーネは首を横に振り、アルバノスは深いため息をつく。
私はジャヌの視線から逃げるように目をそらした。
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