3人が本棚に入れています
本棚に追加
「なにがあっても戻らない。 自殺行為だろ? やっとの思いでここまで逃げてきたんだ」
「あの屋敷にお前の求めるものがあっても戻らないか?」
求めるものは欲しいに決まっている。だがもう目的は果たした。
金になる物を持って帰れただけで十分だ。
それ以上に今はなにを望むものか。
断固として拒否する私に、ジャヌは追い討ちをかけるように言った。
「人を殺したと、大声で歌い回ってもいいんだぞ」
殺したのはジャヌではないか。しかもなぜ脅されなければならないのか。
「殺したのはお前だろ。 戻るならひとりで戻ればいいだろ」
ジャヌの言葉に苛立ちをあらわにし、私は強い口調で言い返した。
私とジャヌのやり取りをこれまで黙って見ていたカトリーネが遂に口を開く。
「完全にどうかしてる。 元はと言えば全部あんたが悪いんでしょ」
「全部? 金を手に入れると言い出したのはマレウスだろう。 それにおまけが付いただけの話だ。 物事を捻じ曲げるのは関心しないな」
カトリーネは言葉を詰まらせ、無言に戻った。
罪を感じていない者に、なにを言っても無駄だ。罪の意識を感じさせることもできなければ、それを認めさせることもできない。
「ならこうしよう。 今、お前が最も求めているものをくれてやる。 その代わり、お前は屋敷へ戻る。 等価交換だ」
最初のコメントを投稿しよう!