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「血と闇、そして絶望に飢えているその目をもっとよく見せてくれ…」
「違う!俺じゃない!」
私ははそう叫び、目を開いた。時計に目をやると午前2時。
「またこの夢か…」
そう呟き、深いため息をつきながら疲れた身体を無理に起こした。
「もう、うんざりだ…」
ぽろりと言葉がこぼれる。
私は連日、気が狂いそうなほど同じ夢をみていた。
「いったいなんだよ…この夢は」
額に手を当て考え込む。毎回こうだ。
夢をみては考え、なにもしていない時でも無意識に夢のことを考えている。
そして再び眠りにつく。そんな毎日を送っていた。
眠りたくない。だが、疲れた身体は悲鳴をあげる。今日も意識を飛ばすように目を閉じた-
「…たか」
身体を裂かれるような低く、冷たい声。
それは連日耳にする、聞き慣れた声。
「来たか。会えるのを楽しみにしていたぞ」
その声はそう語りかけてきた。
「またか…。一体、お前は誰で、この夢はなんだ…」
私は疲れ、冷え切った声で男に問いかけた。
この夢は妙だ。夢の中では自分の意識は現実のように制御できる。それに、夢の中で起きたことは事細かに覚えており、忘れることができない。まるで記憶に鋭いナイフで刻み込まれているようである。
「お前は過去から続く呪い。俺とお前は同じ存在…。お前の知りたいことはじきにわかるさ…」
男はそう言うと、なにやら不気味な笑みを浮かべているようだった。
姿は見えないが、その男からは、どことなく悲しそうな、暗闇の中に囚われているような、だがそれを楽しんでいるかのような雰囲気が伝わってきた。
「俺は、お前みたいな奴は知らない。それに、これはただの夢だ…」
私は少しだけ口調を強くし、男に言った。
すると男はしばしの間無言になり、静かに囁いた。
「本当にこれは夢か?」
男の口から出た言葉に、思わず黙り込んでしまった。
以前、夢の中で怪我をしたことがあったが、些細な怪我だった為、気にせずにいた。しかし、それは目が覚めても残っていた。知らぬ間に傷つけたのだろうと気にせず放っておいたが、それにしては不自然な傷だったのだ。
男は更に話し続けた。
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