Episode1 ~記憶のはじまり~

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―ジリリリリリ! 静けさを切り裂く甲高い音で私はベッドから飛び起きた。 周りを見渡す。そこは当たり前のように生き、生活している世 界。 いつものように疲れた身体を無理に起こした。 その時、右腕に鈍い痛みが走った。夢の中で謎の男に切りつけられた傷跡。 傷口からは燃えるような真っ赤な血が滴り落ちている。 私はその時確信した。夢と現実の繋がりを。 痛みに震える腕を必死に堪えながら手当てをし、着替えを済ませ自宅を後にした。 いつものように仕事をし、当たり前のように時間が過ぎる。 自然とあの男の言葉が繰り返し頭をよぎる。 ―本当にこれは夢か― 現実と夢の違いはなんだろうか…。現実が存在しないのなら、いったい私はどこに生きていて、何者なのだろうか…。 そんな考えばかりが思考を支配する。 そして、右腕の傷が語りかけてくるように、鈍く痛む。 当たり前のように生きているこの世界に対して、疑問を抱かずにはいられなかった。 あっという間に過ぎさる毎日。 そして今日という日も終わりを迎える。 暗闇の中。 「待ってたよ」 待ち焦がれたように男は言った。 私は力無くため息をつきながら周を見回した。 そこはいつものような暗闇の中ではなく、朽ち果てた大きな建造物。まるで、中世ヨーロッパの闘技場を連想させる。 建物の支えだろうか、大きく、今にも崩れそうな支柱が所狭しと並んでいる。 目の前に空高くそびえ立つ支柱のてっぺんに、男が座っている。 喪造作に流れる黒い髪、全てを見通しているような鋭く赤い目、全身には漆黒のローブ。男の風貌を見た私は。思わず息をのんだ。 「来たくもないのに来てしまうのが夢。夢と現実の見境がつかなくなるのもまた夢。現実では起こりえないことが起きるのも、夢だ」 男は口元を三日月のように緩め、淡々と話す。 「…お前は誰なんだ。それに、目的はなんだ…」
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