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―ジリリリリリ!
静けさを切り裂く甲高い音で私はベッドから飛び起きた。
周りを見渡す。そこは当たり前のように生き、生活している世
界。
いつものように疲れた身体を無理に起こした。
その時、右腕に鈍い痛みが走った。夢の中で謎の男に切りつけられた傷跡。
傷口からは燃えるような真っ赤な血が滴り落ちている。
私はその時確信した。夢と現実の繋がりを。
痛みに震える腕を必死に堪えながら手当てをし、着替えを済ませ自宅を後にした。
いつものように仕事をし、当たり前のように時間が過ぎる。
自然とあの男の言葉が繰り返し頭をよぎる。
―本当にこれは夢か―
現実と夢の違いはなんだろうか…。現実が存在しないのなら、いったい私はどこに生きていて、何者なのだろうか…。
そんな考えばかりが思考を支配する。
そして、右腕の傷が語りかけてくるように、鈍く痛む。
当たり前のように生きているこの世界に対して、疑問を抱かずにはいられなかった。
あっという間に過ぎさる毎日。
そして今日という日も終わりを迎える。
暗闇の中。
「待ってたよ」
待ち焦がれたように男は言った。
私は力無くため息をつきながら周を見回した。
そこはいつものような暗闇の中ではなく、朽ち果てた大きな建造物。まるで、中世ヨーロッパの闘技場を連想させる。
建物の支えだろうか、大きく、今にも崩れそうな支柱が所狭しと並んでいる。
目の前に空高くそびえ立つ支柱のてっぺんに、男が座っている。
喪造作に流れる黒い髪、全てを見通しているような鋭く赤い目、全身には漆黒のローブ。男の風貌を見た私は。思わず息をのんだ。
「来たくもないのに来てしまうのが夢。夢と現実の見境がつかなくなるのもまた夢。現実では起こりえないことが起きるのも、夢だ」
男は口元を三日月のように緩め、淡々と話す。
「…お前は誰なんだ。それに、目的はなんだ…」
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