31人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
深夜のシラクス。人けのない小さな屋内競技室。
忙しすぎる暴君は、こんな時間でなければ愛する者に会うことができない。
「遅い……」
眉間にシワを寄せ、イライラしながら待っている。
ふだんの王は冷静である。どんなに恐ろしい命令であろうと、覚めた瞳で淡々と下す。有能な王ではあるが、その冷酷な様は人々に恐怖を与えた。
妹婿を殺し、妹を殺し、賢臣アレキスも殺した。臣下に対して情け容赦はなく、派手な暮らしをしている者には人質を差し出すことを命じ、それを拒むと磔刑にする。
残虐非道な暴君と言われているシラクスの王、ディオニス。
彼はとても不機嫌な顔をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!