紫陽花

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 今日も朝から雨だった。  学校を出て、いつも通り公園を目指す。今日はどうかな、と思いながらベンチへ向かうと、そこには誰も居なかった。  屋根の下に入り、傘を閉じてベンチの隅に座る。  私はふう、と息を吐いて肩の力を抜いた。  ここは日常から少し離れた、少し不思議な空間だ。雨の向こうに色鮮やかな紫陽花が見え、屋根や地面に当たる雨音だけが響いている。少し下を向けば、水たまりに波紋が幾重にも重なって広がる様子が見えた。  ここに来ると、私はほっとして、穏やかな気持ちになれる。  「あの」  もうしばらくぼんやりしていこう、と思っていた時、背後から声をかけられた。  知らない声だが、ここにいるのは私しかいない。  振り返ると、そこにいたのは淡い青の着物を着た男性だった。  雨の音で足音が聞こえなかったのだろう、と私は思った。彼が立っているのは、私が腰掛けている反対側の屋根の下だった。  「驚かせてしまいましたね。すみません」  彼は申し訳なさそうに言った。  「いえ、大丈夫です。どうかしましたか?」  私がそう答えると、安心したように彼は笑った。  「あの、お隣、失礼してもよろしいですか? 少し紫陽花を眺めていたくて」     
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