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ヤミの役割はこっくりさんだ。
この学校では「ヤミコさん」と呼ばれている。
文字と数字。それから鳥居を書いた紙。
鳥居の上に十円玉をひとつ。
指を置いてお決まりの台詞で呼び出して、質問をすると答えてくれる。
失敗したら、取り憑かれるとかおかしくなってしまうとか。噂は色々あるけれど、この学校なら大丈夫。
暗闇から狐さんが助けに来てくれる。
何でも質問に答えてくれるこっくりさん。
何かあったら暗闇から助けてくれる狐さん。
十円玉の裏と表。
そんな、お手軽で危なくて、それ故に心をくすぐる噂話。
ヤミはこっくりさんが行われると、その呼び出しに応えて手助けをする。
正しく呼び出されたら、それに応じた解答や手助けを。
失敗したなら。それ相応の対処を。
とはいっても。
正しい手順を踏んだとしても彼を呼び出せることはほとんどなく、ヤミはそれを眺めているだけのことが多い。
生徒達が呼び出す場の近くに佇んではいるが、基本的にはそれだけ。見守るだけで終わることがほとんどだ。
何も起きなければそれで良し。
何か起きたならば然るべき対応を。
噂話の安定と平和は、彼らそれぞれの持つ役割と行動によって守られている。
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