こっくりさんこっくりさん

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 □ ■ □  ヤミの役割はこっくりさんだ。  この学校では「ヤミコさん」と呼ばれている。  文字と数字。それから鳥居を書いた紙。  鳥居の上に十円玉をひとつ。  指を置いてお決まりの台詞で呼び出して、質問をすると答えてくれる。  失敗したら、取り憑かれるとかおかしくなってしまうとか。噂は色々あるけれど、この学校なら大丈夫。  暗闇から狐さんが助けに来てくれる。  何でも質問に答えてくれるこっくりさん。  何かあったら暗闇から助けてくれる狐さん。  十円玉の裏と表。  そんな、お手軽で危なくて、それ故に心をくすぐる噂話。  ヤミはこっくりさんが行われると、その呼び出しに応えて手助けをする。  正しく呼び出されたら、それに応じた解答や手助けを。  失敗したなら。それ相応の対処を。  とはいっても。  正しい手順を踏んだとしても彼を呼び出せることはほとんどなく、ヤミはそれを眺めているだけのことが多い。  生徒達が呼び出す場の近くに佇んではいるが、基本的にはそれだけ。見守るだけで終わることがほとんどだ。  何も起きなければそれで良し。  何か起きたならば然るべき対応を。  噂話の安定と平和は、彼らそれぞれの持つ役割と行動によって守られている。
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