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「………」
俺は、そのプリントアウトされた紙を読んで絶句していた。
たった数秒の間に…
見事、四つのお題全てが入った文章が、本当に出来上がった…。
が、しかし…
肝心のストーリーが…
つまらん………。
しかも………。
『どうだ?こんな感じで』
悪魔は、ドヤ顔。
「あのー、書きたかったのは、ホラー小説なんですけど…」
『な、何だと?!
そんな話は聞いてないぞっ!』
しまった!
説明が足りなかった…。
俺は、後悔した。
うん?
ちょっと待てよ?
俺は、ひらめいた。
幻の名画のオークションか…。
例えば…
こんなお話はどうだろう。
太古の悪霊が取り憑いた名画が発見され、オークションにかけられる。
しかし、そのオークション会場で悪霊が暴れだし!会場は大パニックに!
ところが、
事前にニュースでオークションが有る事を知った、霊能力を持った花粉症の占い師が「これは、何か事件が起こるかもしれない!」と察知してオークション会場に乗り込み!悪霊を退散させる!
こうして…
占い師は、そのお礼に高価な幻の名画をタダで手に入れました…とさ!
めでたし、めでたし。
どうだ!
これなら、何とかホラー短編小説として行けそうじゃないか!
よし!
これで行こう!!
「いや、これでオッケーです!ありがとうございました!」
俺は、悪魔にお礼を言った。
『え?良いのか?』
「うん!大丈夫です!
約束は約束ですよね…。本当は嫌だけど、俺から一年分の寿命を持って行って構わないですよ」
『いや…。
その事なんだけどな…』
と、急に悪魔は歯切れの悪い返事をした。
「うん?どうかしました?」
『す、済まん!
この話…無かった事にしてくれ!』
…は??
『私とした事が!
ろくに事前確認もしないで報酬を貰うと言ってしまったが…これは、完全に私のミスだ!
迷惑かけたお詫びに死んだ後の魂も欲しいだなんて事も言わないから、この話は無かった事にしてくれ!』
「え…」
そ、そりゃまあ…
無かった事にしてもらえれば、俺の方もラッキーだけど…。
「しかし…何でまた?」
俺の質問に悪魔は、少し神妙な顔付きで言った。
『実は、な…』
「は、はい…」
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