失くした色

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描いていることはクラスの誰にも言うなよ」  無下に断ってしまって腹いせにこのことを言いふらされてもまずいのだ。それにもう、むしろさっさと協力して終わらせた方が早い気がしてきた。 「了解であります久遠隊長! ……それでその、肝心の課題内容はこのグラデーション練習のやつになりまして……」 「って、これ初歩の初歩のヤツじゃないか! こんなのカケアミを重ねて濃淡を表現すればいいだけだろ! ここをああしてこうやって……」  「ふえーん! わかんないよぉー!」  結局、この日は陽がどっぷり暮れるまで付き合わされる羽目になった…………。  それから一日経った次の日の昼休みにも、ヤツはやって来た。 「久遠くんってば、お昼も一人で美術室で食べてるのね。そんなにいつも制作活動を頑張れるなんてすごいわね。あたしもここで食べていい?」  田辺は私の返事を聞くまでもなく、もう隣の席に座って弁当を広げていた。 「え? でももうお前、昨日の課題はどうにか完成したはずじゃあ…………?」 「えへへ……、実はまだ今まで提出していない課題がどっちゃり十個くらいはあるのよね~……」  まさに開いた口が塞がらないとはこのことだろうか……。
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