失くした色

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私はそちら側には行けない。近付いちゃいけなかったんだ。  そう感じた私はゆっくりと踵を返して、美術室へと向かう廊下を歩きはじめた。 「そう……だよな……、初めから届くはずなどなかったんだ」そう言って私は美術室にたどり着くと原稿を机の上に投げだして、床に敷いてあるビニールシートの上に倒れ込んだ。  このまま寝てしまいたい、そう思ったからだ。少々床が硬いし冷たいが、今の自分にはそれくらいがお似合いだと思った。  それからどのくらい私は眠っていただろうか? 3時間くらいな気もするし、30分くらいな気もする。起き上がるのもしんどいので、寝っ転がったままゆっくりと目を開けて美術室を見渡してみると、辺りはもうすっかり真っ暗になっていて、外のわずかな街灯の光が窓から射し込んでいるだけだった。 「おはよ、よく眠れた? 久遠くん」 「うっひゃああああああああああ!?」  暗がりの中で突然、頭上で声がしたので慌ててビビりながら飛び起きて、尻もちをつく。 「まったくもうっ! しばらくあたしがクラス委員の仕事で行かなかった間にまさか、床で眠るようになっていたとは驚きだわ。風邪でも引いたらどうするのよ!」  その声は田辺
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