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だけど、今でもワスれられないんです。
それはどしゃぶりの、雨の日でしたね。
お母さんと知らないおじさんが、ハダカでふとんに入っていたとき、台所の包丁でさした、お母さんのオッパイのかんしょく、オッパイから血がふきでて真っ赤なシャワーをあびたかんしょく。
首を切ったあのおじさんののたうちまわるすがたを見て、ぼくはぞくぞくしました。
あれほどゾクゾクしたのは、人生ではじめてでした。
少年院を出た後、ぼくをひきとってくれたシセツの先生を3人さして殺しましたが、お母さんの時ほどゾクゾクしませんでした、どうしてでしょう?
この鉄ごうしに囲まれたへやで、独りで、お母さんの最後を思い出してると、あのぞくぞくした気持ちがよみがえってきます。肉をきるカンショクがわすれられません。
お母さんだってあのおじさんだって、人をなぐるカンショクにゾクゾクしたから、まいばんぼくをなぐり続けたのでしょう?
ウソを言うのはドロボウのはじまりだって、いいわけにしながら、なぐりつづけたんじゃないですか。
ぼくはウソなど言ったことはありませんでした、でも、子どもで弱かったので悔しかったです。
強くなりたいと思いました。
だから、死んであたりまえです。
ぼくが受け続けたぼうりょくを考えるとおあいこです。
おあいこだから、ぼくはさいごに手紙に、ウソを書きました。
ぼくはウソをついてもドロボウにはなりませんでした。
これでぼくの勝ちです。
家族の中ではぼくが、最強、です。
ケイグ
P.S.今日これから絞首台にのぼります。
さようなら。
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