26/58
前へ
/58ページ
次へ
「おっ、と」 玄関まで迎えてくれた史弥に、私はたまらずに抱きついた。 少し驚いたような声を出したけれど、しっかりと私を抱き留めてくれた逞しい腕に、胸が熱くなる。 「…瑠唯?なんかあった?」 まるで鼓膜を撫でるように響く優しくて低い声。 胸がぎゅっとなって、泣きそうになってしまう。 「…会いたかった」 震えた声は、本心を(つむ)いでいた。 史弥の背中に回した腕に、ぎゅっと力を籠める。 まるでしがみつくように、そのまま史弥のシャツを握った。 「…会いたかったの…っ」 言葉と同時に、目から涙がポロリと零れ落ちた。 きっと、私は寂しかったんだ。 寂しかっただけなんだ。 素直になった瞬間、心がスーッと軽くなっていくようだった。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加