本編

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天使は雲の上から遥か地上の人間を見ていた。 「また争いごとしてる…」 そして天使は悲しそうにため息をついた。 人間という種族はいつもいつも争いごとをしていた。 戦争にあけくれ、貧富の差を生み出し、たくさんの人が死んでいく。 そんな光景を見るたびに毎回すごく悲しい気分になるのだった。 そんなある日、天使と神様は一緒に散歩をしていた。 「ねぇ神様?」 「なんだい?天使よ」 「なんで人間を完璧に作らなかったんですか?」 地上や人間を作ったのは全て神様で、天使も神様が作ったのだ。 みんなを天使なようにすればみんな平和で、 素晴らしい世界が産まれたに違いないのだ。 現にこの天上界は誰も争いごとをしないし、 皆が穏やかに暮らしている。 「それはね…私の汚れている部分を肯定するためだよ」 「汚れている部分?」 神様は完全無比で完璧な存在だ。 そんな神様に欠点などあるわけがない。 「そう。私は決して完璧ではない。 完璧であろうとするが、私もやはり弱い存在なのさ」 天使はイマイチ納得がいかなったが、神様がそういうのならばきっとそうなのだろう。 「それと人間がどういう繋がりがあるんですか?」 天使が問う。 「確かに人は醜い。いつまでたっても成長をしないし、 いつまでも同じことを繰り返し争いごとをしている」 その言葉にウンウンと頷く天使。 「でも…きっといつかみんながみんなを理解し合える日がくると思うんだ。 お互いの弱さを尊重し合い、平等な社会を作れるような…そんな日が」 「そんな日がくるとは到底思えませんね」と天使。 「しかし、お前は下界を何度も何度も見下ろしているだろう? それは暗に人間に期待をしているんじゃないのか?」 天使にとってそれは図星だった。だからこそ、人間が争うたびに悲しい気持ちになるのだと。 「不完全な人間が少しずつ少しずつ成長を続けるたびに、 私も自分の弱い部分を少しずつ成長させようと努力させる気分が湧いてくるんだよ」 その言葉に天使も共感できたような気がした。 「でもひょっとしたら、そんな日は二度と来ないかもしれないですよ?」 天使が忠告する。
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