番外編2

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嫉妬だとか、そういう感情じゃない。 ただ、今までもこの先も雫の中を支配しているのはあの男だけなのかと思ってしまう。 どれだけ俺が大切にしても、どれだけ俺がその肌に触れても、あの男が植え付けた沢山の物に塗り潰されてしまうんじゃないかと、そう思ってしまう。 どう足掻いたって過去は変えられるもんじゃない。 その事実が、こんなにも遣る瀬無い。 ハァ…と口から重たい溜め息が零れる。 普段なら根っからの合理的思考しか持ち合わせない自分に、まさか恋愛で頭を悩ませる時が来るとは思いもしなかった。 そんな事を考えながら、再びハラリと落ちてきた横髪を耳に掛けると寝息を立てていた雫は「ん…」と小さな声を漏らしながら身を捩って、薄っすらと目を開けた。
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