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…ああ、やっぱり。また魘されていたのか。
俺の中の仮定に過ぎなかったそれが雫の表情を見て確信へと変わっていく。
自分の中に形容しがたい感情が芽生え出していた時、雫は黙ったままふるふると首を横に振った。
「…夢は、見てません」
それとほぼ同時に発された言葉。
たった今確信へと変わったはずなのに、雫から返ってきた答えは予想に反したものだった。
一瞬言葉に詰まったが、すぐに頭に浮かんだ疑問を声にした。
「…じゃあなんで、泣いてたんだよ」
そう問いかければ雫は伏せていた目を上げ、上目がちに俺を捉えてからその小ぶりな唇をゆっくりと動かした。
「……寂しかったんです…」
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