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やっとの思いで出た声はまるで振り絞るようなものだった。
身体がバカみたいに熱くて熱くて、仕方ない。
羞恥に駆られている最中、細い腕がふっと首に絡まった。
それに反応して首筋に埋めていた顔を上げれば、潤んだ瞳で俺をじっと見つめる雫と視線が交じり合う。
「……いいよ」
これでもかという程に女の色香を漂わすその表情に、思わず息を呑む。
まるで知らない女を見ているような感覚だった。
「…やめないで…、」
耳を澄ませていなければ聞き逃してしまいそうなほどにか細い声でそう言うと共に、伸ばされた小さな手。
その細い指に自分の指を絡ませるようにして、そのまま身体ごと引き寄せた。
額、頬、鼻、至る所に唇を寄せれば、雫は擽ったそうに身を捩り、きゅっと目を瞑る。
その姿でさえも、愛おしくて仕方ない。
「…優しくできなかったら…ごめん」
取って付けたような俺の言葉を最後に、深い深い口付けをその小さな唇に落とした。
fin.
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