第4章

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すっかり人気がなくなったこの空間に木霊(こだま)するように響くのは私の荒い息遣い。 数秒の沈黙の後、彼はハァっと溜め息を吐くと、うざったそうに口を開いた。 「…要らねぇよ、そんなもん」 「それはダメです…っ!」 汚してしまったことは事実だし、ここで私が折れてしまったらまたこの人に貸しを作ってしまう。 それだけは絶対に避けたくて、私は咄嗟に鞄の中に手を突っ込んだ。 「今、お金を――…って、ちょっと!」 鞄の中に視線を移した一瞬の隙に、香坂さんはまたもやスタスタと歩き始めた。 財布を探していた手を止めて、私はその大きな背中をまた追いかける。 「…香坂さん!」 何度名前を呼んでもその長い足が止まることはなく、私もその大きな背中を追いかけることをやめなかった。
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