第4章

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そんな状態で一体どのくらいの距離を歩いたんだろう。 気づいた時には、仕事帰りによく寄っているコンビニの近くまで来ていた。 ずっと小走りで香坂さんの後を追っていたから、足の裏がジンジンと痛む。 息も絶え絶えで、額には薄らと汗が滲んでいた。 …私、一体何してるの…。 ふと冷静にこの異常な状態を客観視すると、とてつもなく泣きたい衝動に駆られた。 もう何もかもがどうでも良くなって、足を止めて、そのままその場にずるずるとしゃがみ込んだ。 とにかく乱れた息を整えるために深呼吸を繰り返していた私の頭に、突然何かがバサッと降ってきた。 「…っわ、」 驚いて声を上げて、その布のようなものを頭から剥いだ。 その布のようなものは黒いジャケットだった。 そのジャケットからは、ムスクっぽい香りと煙草の苦い匂いがした。
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