第4章

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数分後、コンビニのビニール袋を手にした香坂さんが戻ってきた。 「ちょっと付き合えよ」 相も変わらず温度のない声で一言そう放つ。 その袋の中にはビールが2本入っている。 「これでチャラってことでいーだろ」 疑問形ではなく、断言するように発せられた言葉。 やっぱり私には拒否権も決定権もない。 どうやら飲みに付き合うことで私が汚してしまったジャケットのことは目を瞑ってくれるらしい。 そんなことでチャラにしてもらうなんて、どう考えても釣り合いがとれていない気がするけれど、給料日前で金銭的には苦しいのも事実。 ここは素直にその言葉に甘えようと思い、私は小さく頷いてからのそのそと立ち上がった。
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