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そのベンチの端っこにちょこんと腰を下ろして、缶のフタを開けた。
プシュッという音とともに、アルコールの苦い匂いが鼻を掠める。
チラリと横目に香坂さんを盗み見ると、彼は私から少し離れたところに立って、缶を片手に煙草を吹かしていた。
香坂さんが先に飲んでいるのを確認してから、私も同じように缶を煽った。
乾き切っていた喉を通過していく刺激的な味と匂い。
十分に潤った口内に爽快感を感じながら、私ははぁーっと深く息を吐いた。
肌を撫でるように吹く風がとても心地いい。
外でお酒を飲むのなんて、いつぶりだろうか。
「…よくここで飲むんですか?」
心地よい風に当てられたのか、外でお酒を飲む開放感からなのか、ふと頭に浮かんだ疑問が言葉として、すんなりと出てきた。
そう思ったのは香坂さんの足取りに迷いがなかったからだった。
きっとここら辺の土地勘がないと、こんなところにある小さな公園なんて知らないだろう。
そんなことを考える私をチラッと一瞥した香坂さんは、
「…まぁ、たまにな」
ふぅっと紫煙を吐き出しながら淡泊にそう返した。
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