第4章

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「お前、いつ見ても生気がない顔してるから」 皮肉とも取れる言葉だけど、(あなが)ち間違いでもないと妙に納得した。 私はいつも何かに怯えながら全てを諦めていた。 そんな風に、毎日をやり過ごすことしかできなかった。 「それに、肌が白すぎて不健康そうに見えんだよ」 何も言葉を返せないでいると、微かに眉を寄せた香坂さんは続いてそう言った。 その言葉に、思わず少し目を見開く。 「…え、」 まるで零れ落ちるかのようにそんな間抜けな声が出てしまった。 心底驚いている私の顔を怪訝な眼差しで見つめていた香坂さんは「なんだよ」と少しイラついたように私の次の言葉を促>した。 「…以前にも同じようなことを言われたことがあったので…少し驚いただけです」 語尾につれて小さくなっていく声は、微かに震えている気がした。 『…雫は肌が白すぎるくらい白いから…少し、貧弱そうに見えるよな?』 私の頬に大きな手を添えて、優しい笑みを浮かべてそう言った彼を思い出す。 あぁ、どうして。 今、こんなことを思い出してしまうんだろう。 いつだって目を閉じれば浮かんでくるのは優しい彼の顔だった。 優しくて、温かくて、柔らかくて。 そんな風に笑顔を纏う、彼の顔ばかりだった。 締め付けられる胸は痛みを伴い、それに比例するように息がしづらくなる。 思わずブラウスの胸元をぎゅっと握りしめた、その時。 「…昔の男のことか」 バサリと言い捨てられたその言葉に、今度は「えっ?」とさっきよりも大きな声を上げて、俯き気味だった顔をガバっと上げた。
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