第4章

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その後、何も言わなくなった香坂さんに私も何かを言うこともなかった。 静かな沈黙が流れる。 けれどそれは嫌なものではなく、やっぱりどこか心地よさを感じさせるものだった。 お互いにビールを全て飲み終えて、公園を後にする。 「お前の家、どっち?」 「私はあっちです」 十字路に差し掛かったときにそう問われて、私は右の方向を指差した。 それに何も返事はしなかったものの、私が指差した方向へと歩いていく香坂さんに、咄嗟に口を開いた。 「あ、あの、大丈夫です!私、ひとりで帰れますからっ」 想像以上に大きな声が出てしまって、羞恥に駆られていたのも束の間のこと。 顔だけで此方に振り返った香坂さんは、ギロリと睨むように私を見下ろした。 「俺もこっちなんだよ」 てっきり送ってくれるのかと思ったけれど、たまたま香坂さんの行く先も私と同じだったらしい。 何か文句あんのか?とでも言いたそうな眼差しに私は「…すみません」と小さく謝罪の言葉を口にするしかなかった。 すぐに前に向き直り、足を動かした香坂さんを見て私も歩を進める。 そのままいつもの歩調で私を置いていくのかと思いきや、香坂さんの歩くペースは随分とゆっくりなもので、私が置いて行かれることはなかった。 まるで、私の歩調に合わせるようなそのペース。 …優しいのか、優しくないのか、よく分からない人。
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